梨木香歩 おすすめ5選

今回は物語の名手、梨木香歩さんのおすすめ本を紹介いたします。

多くのファンを持つ梨木香歩さん、何を隠そう私が1番好きな作家さんです。

映画化されて代表作となった『西の魔女が死んだ』をご存知の方は多いのではないでしょうか?
『西の魔女が死んだ』のイメージが強い方は意外かもしれませんが、梨木香歩さんは日本を舞台にした物語をたくさん書かれており、そのどれもが素晴らしく、とても美しい物語なのです。(鼻息荒め)

また、多くのエッセイを出版されています。
植物と鳥に造詣が深く、読んでいるだけでマイナスイオンを浴びているような自然描写のエッセイが多いです。
物語にも染み出ていますが、梨木香歩さんの凛とした精神性はエッセイのほうがより強く垣間見ることができます。

「好きな作家の新刊が読めることは幸せだ」と思わせてくれる梨木香歩さん。

正直、選抜の5冊以外も全ておすすめですが、今回は私が数えきれないほど読み直したものをご紹介します。

1959(昭和34)年生れ。小説に『丹生都比売 梨木香歩作品集』『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『裏庭』『からくりからくさ』『りかさん』『家守綺譚』『村田エフェンディ滞土録』『沼地のある森を抜けて』『ピスタチオ』『僕は、そして僕たちはどう生きるか』『雪と珊瑚と』『冬虫夏草』『海うそ』『岸辺のヤービ』など、またエッセイに『春になったら莓を摘みに』『ぐるりのこと』『渡りの足跡』『不思議な羅針盤』『エストニア紀行』『やがて満ちてくる光の』『炉辺の風おと』『歌わないキビタキ』などがある。

引用:新潮社ホームページ

鹿児島県出身で、イギリス留学の経験がおありです。
児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事し、児童文学作家・小説家としてデビューされます。
『西の魔女が死んだ』は、梨木香歩さんのデビュー作なのですが、イギリスでの経験が色濃く反映されている一冊です。

初期の作品は文庫版や新装版で加筆や内容変更をしているものが多いようなので、ファンとしてはすべて揃えたくなってしまいます。

 

家守綺譚

圧倒的1位に君臨する、名作中の名作です!!(鼻息荒め)

庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。

引用:Amazon

時はほんの百年前、明治のころ。
物語の中心には琵琶湖が鎮座し、京都・滋賀あたりが舞台。
貧乏な物書きである主人公 綿貫征四郎が鬼籍に入った親友 高堂の実家で家守をしながら、小鬼や河童人魚等々この世ならざるものたちと暮らす日々が綴られます。

日本語の美しさ、自然の描写、愛らしい魑魅魍魎。
梨木香歩という作家の世界観、その素晴らしさが凝縮された物語です。

 

冬虫夏草

亡き友の家を守る物書き、綿貫征四郎。姿を消した忠犬ゴローを探すため、鈴鹿の山中へ旅に出た彼は、道道で印象深い邂逅を経験する。河童の少年。秋の花実。異郷から来た老女。天狗。お産で命を落とした若妻。荘厳な滝。赤竜の化身。宿を営むイワナの夫婦。人間と精たちとがともに暮らす清澄な山で、果たして再びゴローに会えるのか。『家守綺譚』の主人公による、ささやかで豊饒な冒険譚。

引用:Amazon

『家守綺譚』の続編です。
こういった〇〇5選といった記事ではあまり続編は載せないのかもしれませんが、ぜひ連作で読んでいただきたいシリーズです。

本作で主人公 綿貫が旅をするのは滋賀県の湖東。実在する寺社を巡り、愛知川沿いを進み、綿貫は旅をします。
そしてファンがその軌跡を辿って旅をするわけです。(例えば私とか)
ちなみに私は本書がきっかけで滋賀県にハマってしまい、年に数回旅行に行っています。

前作に続き、美しい物語です。
登場する集落の一部は、既に永源寺ダムの底に沈んでしまっています。物語の世界と現実の世界が細い糸で繋がる、様々な視点で読み込むことが可能な飽きのこない一冊です。

また、今回の5選には入れませんでしたが本シリーズにはもう一冊『村田エフェンディ滞土録』があります。全てが繋がる伏線回収が楽しめますので、そちらもぜひ手にとってみてください。

春になったら莓を摘みに

「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。ウェスト夫人の強靱な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける――物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。

引用;Amazon

梨木香歩さんの作品には一貫して、清澄な芯が通っています。静かで柔らかく、しなやかで強かなその芯は何か。どうしてこんな物語が紡げるのか。その疑問を多少なりとも解消できるエッセイです。

人間に限らない他者、動植物や時に物語の中だけに生きるファンタジーな生き物。それら理解のできないものを包み、受け入れるという姿勢。寛容さの中で優しい物語が紡がれていく、その礎が築かれた時期が書かれているように思います。

私は本書を手に取ったとき「本に呼ばれる」体験をしました。面白いことに、前述した『家守綺譚』の文庫本解説を書いている吉田伸子さんも同じ体験をされたようです。まるで梨木香歩さんが物語の中から優しく手招きしてくれているような、不思議で素敵な体験です。

ぜひ本屋に行ったら、棚を探して見てください。私たち以外にも、呼ばれる方がいるかもしれません。

物語のものがたり

『秘密の花園』の主人公はなぜ憎たらしく描かれたのか。『赤毛のアン』の作者モンゴメリは、グリン・ゲイブルスという場所に何を託したのか。児童文学の名作を読み解き、いぬいとみこ、石井桃子、村岡花子、ビアトリクス・ポターら先人たちの仕事の核心に迫っていく。物語の名手による初の児童文学エッセイ集。

引用;Amazon

著者が読んできた、児童文学に関するエッセイ集。

物語を読むということ、それそのものが持つ意味を問うているような一冊です。
物語の名手と呼ばれる人物の目を通して読む名作たち。児童書を読み、こんなにも読み解き膨らまし言語化することは梨木香歩さんにしか成しえないことだと思います。言葉のセンスにただただ羨望の念を禁じえません。

本書で初めて「秘密の花園」を知りましたが、梨木香歩さんの『裏庭』という作品に影響を与えていると知り本を買って読んでみました。ある物語にインスパイアされ新たな物語が生まれる。その生成の過程を見るようで面白い読書体験ができます。

f植物園の巣穴

歯痛に悩む植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界だった。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、私はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。怪しくものびやかな21世紀の異界譚。

引用;Amazon

最後は最もファンタジー色が強い一冊をご紹介します。

引用のあらすじからもわかる通り、登場人物が多種多様。終始主人公の夢の中をふわふわと進みます。
話が進むにつれ、ふわふわしていた存在が輪郭を得ていく様、その真実を知ったとき胸に迫るものがあります。一周目より二周目の方がおもしろさを感じるかもしれません。

人間の深層、脳と心の記憶の底に一緒に溶け込んでいくような物語です。
本書には続編『椿宿のあたりに』があります。続編は本作とは一変した作風で、本作の伏線を回収していくのでそちらもおすすめです。梨木香歩さんの幻想世界にどっぷり浸れるシリーズです。

まとめ

傾倒している作家さんということもあり、熱量多めの自分語りが強い記事になってしまいました。

最近はエッセイ本を出されることが多い梨木香歩さん。
山小屋暮らしを綴ったエッセイなどは植物や野鳥の描写が素晴らしいのですが、やはりファンとしては新しい物語を待ち侘びる日々です。

もしこの記事に目を通していただける方がいれば、ぜひ梨木香歩さんの物語に手を伸ばしてみてください。本を開いた先に、別の世界が広がります。

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